体験する近江上布という伝統的な織物2019-12-19 305 views

滋賀県の中央に位置する小さな町、愛荘町。その愛荘町にある近江上布伝統産業会館では、伝統的な織物の技術が見事に受け継がれている。伝統的な技法で織物を作る場合、たとえ小さな布を1枚織り上げるにも集中力や注意深さが必要になる。
今回はここでこうした伝統的な機織りを実際に体験させてもらうことになっている。

近江上布伝統産業会館に入ると、我々は会館の元気なスタッフに快く出迎えてもらい、機織り機が並んでいる場所へと案内してもらった。館内には様々な色の布や高い技術で作られた織物があり、いくつかのタイプの機織り機が並んでいた。
機織り機が並んでいる場所に来ると、会館のスタッフたちは織物に使われる様々なタイプの素材について説明してくれた。今日はここでヘンプ(日本語では「麻」)を使って小さな布(コースター)作りに挑戦する。使う織り機は地機(じばた)と呼ばれる織り機で、これは近代的な機織り機が導入される以前は広く滋賀県で使われていた伝統的な織り機なのだ。

織り体験を始める前に、スタッフが織物の糸ができるまでの過程を教えてくれた。植物から糸を作るには、細心の注意を払って繊維を取り出し慎重に糸を紡いでいくのだ。
その後でインストラクターの先生が機織り機の使い方を見せてくれた。彼女は全身を使って手際よく機織り機を動かし、縦糸や横糸、糸を通す棒を操り、まるで織り機が彼女の体の一部になっているようだった。
今度は私が織る番だ。機織り機のセッティングを手伝ってもらい、機織り機に向かう。この地機(じばた)と呼ばれる機織り機は、座る部分が地面に近く、機織り機と連動してつながっている腰当てを体に巻いて座る。足元のペダルとこの腰当てを前後に動かすことによって織り糸の調整をしていく仕組みだ。糸を織り込みながら、自分の体全体を使ってこの機織り機をコントロールできるようになるには少し時間がかかったが、何分か経つと機織り機を動かすリズムをつかみ、楽しくなってきた。
慣れてくると、リラックスしながら機織り作業に没頭でき、ほとんど瞑想状態のような感じになっていった。時間はあっという間に過ぎ、麻で織った四角い布(コースター)ができあがった。インストラクターの先生の完成見本と比べると私の布は雑な仕上がりだったが、何よりも機織り体験そのものを楽しむことができた。

織り終わった布の端をきれいに切りそろえた後、会館のスタッフが絣(かすり)布について教えてくれた。絣(かすり)布とは、模様を作り出すためにあらかじめ染めた糸を使って織っていく布だ。こうすることで、出来上がった布の模様は柔らかくかすれたような風合いになる。また絣(かすり)布はさまざまな模様や変化が可能だ。
私が使ったのとは別の近代的な機織り機を使って、インストラクターの先生が絣(かすり)布を織っていくところを見せてくれた。こうした素晴らしい織物が作られるまでにどれだけの手間と技術を要するかを知り、私は驚くばかりだった。

こうした機織り技術は、滋賀県がまだ「近江」と呼ばれていた時代からずっと根づいている。江戸時代には、この近江地方は江戸と京都方面とを行き来する人たちで賑わっており、商業の分野では大きな役割を果たしてきた。織物は近江地方の特産であり、上質な布とその他の必需品を生産してきたのだ。

今回、地機(じばた)と呼ばれる機織り機で小さな布作りを体験させてもらったことで、1つの織物を仕上げるまでにどれだけの手間暇がかかっているのかがよくわかった。おそらく江戸時代には買い手の需要に応えるために、来る日も来る日も機織り作業を続けていたのだと思う。


近江上布伝統産業会館のおかげで、便利さが当たり前の現代の生活と昔の生活がどれほど違うものかについて思いをはせることができた。また自分自身で布を織ってみるという体験は、本当に目からうろこが落ちるような体験で、上質な織物を作りあげるためにどれだけの熟達した技術が必要なのかを気づかせてくれた。今回の機織り体験は他ではなかなかできない特別な体験であり、心やすらぐ楽しいものだった。日本で何か特別なことを体験したいと思っている旅行者には最高の体験になると思う。

 

近江上布伝統産業会館

近江上布伝統産業会館は、産地を訪れる方々に、近江の麻織物についてのご案内をしています。貴重な手織りの現場をオープンにし、機織りなど体験メニューも豊富です。


住所 529-1331  滋賀県愛知郡愛荘町愛知川13−7
TEL 0749-42-3246
営業時間 9:0017:00
定休日 月曜日、祝日、年末年始




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